桜井市外山の辺りかという。 吉隠を中心として 西は外山から 東は宇陀市榛原区におよぶ一帯の地とみる説、 奈良市富雄辺りとみる説、 桜井市鳥見山の麓の地とする説など諸説がある。
「跡見」を外山とすると、 外山南方の鳥見山(高さ、244m)と考えられる。
紀朝臣鹿人の、跡見茂岡の松の樹の歌一首
茂岡に 神さび立ちて 栄えたる 千代松の木の 年の知らなく
(6・九九〇)
大伴坂上郎女、跡見の庄より、宅に留まれる女子、大嬢に賜ふ歌一首 并せて短歌
常世にと 我が行かなくに 小金門に もの悲しらに 思へりし 我が子の刀自を ぬばたまの 夜昼といはず 思ふにし 我が身は痩せぬ 嘆くにし 袖さへ濡れぬ かくばかり もとなし恋ひば 故郷に この月ごろも ありかつましじ
(4・七二三)
朝髪の 思ひ乱れて かくばかり なねが恋ふれそ 夢に見えける
(4・七二四)
右の歌は、大嬢が進る歌に報へ賜ふ。
典鋳正紀朝臣鹿人、衛門大尉大伴宿祢稲公の跡見の庄に至りて作る歌一首
射目立てて 跡見の岡辺の なでしこが花 ふさ手折り 我は持ちて行く 奈良人のため
(8・一五四九)
大伴坂上郎女、跡見の田庄にして作る歌二首
妹が目を 始見の崎の 秋萩は この月ごろは 散りこすなゆめ
(8・一五六〇)
吉隠の 猪養の山に 伏す鹿の つま呼ぶ声を 聞くがともしさ
(8・一五六一)
跡見山
雪に寄する(十二首のうちの一首)
うかねらふ 跡見山雪の いちしろく 恋ひば妹が名 人知らむかも
(10・二三四六)